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もどかしさ

私たち培養士は、採卵後から、卵子や精子の状態を逐次、患者さんに説明していきます。採卵当日には、必要に応じて卵子と精子のお見合い(媒精)のさせ方を相談します。さらに採卵翌日には、きちんと卵子と精子が合体(受精)できたか、翌々日には、細胞分裂が始まったかをお電話で報告しています。胚盤胞移植もポピュラーになりましたので、培養経過も複雑になり、移植や凍結の計画も合わせて、報告する内容がとても多くなってきました。
体外受精を受けられる方にとって、卵子・精子の状態、受精成立、初期胚・胚盤胞の発育状況は、とても大切な一大関心事です。でも、たまに、採れた卵子の状態から、今後の受精・初期胚・胚盤胞までの経過予想を要求されて、答えに困ってしまうこともあります。これまでの膨大な培養経験やデータから、いろいろ戦略を考えてベストを尽くそうとしているのですが、機械と異なり、生物(細胞)は本当に予測不能の局面があります。もし、期待・予定どおりの説明や報告ができなくて、もどかしい時があっても、一生懸命心を込めて培養していきますので、どうか許してくださいね。

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通常の体外受精

体外で精子と卵子を受精させるには、媒精 (卵子と精子のお見合い)をすることが必要です。媒精には、体外受精のいろいろな歴史を経て、現在、「通常の体外受精:conventional IVF」と「顕微授精:ICSI」の二通りがあります。精液検査所見がある基準をクリアできれば、「通常の体外受精」が選択されます。

「通常の体外受精」は、卵子と培養液の入った dish (培養するために作られた特別の容器) に、良好な精子を10万から20万匹ほど入れます。つまり、精子に「おまかせコース」です。精子たちは卵子めがけて懸命に泳いでいき、卵子の周囲にたくさん接着してなんらかの反応を卵子に与えた後、運命の精子一匹が卵子の透明帯・細胞膜を通過して、内部 (細胞質) に進入します。卵子の細胞質に入った精子は頭部が変化して雄性前核 (父側の遺伝子のかたまり) になり、順調に成熟した卵子内の雌性前核 (母側の遺伝子のかたまり) と合体できると、めでたく「受精」となります。

 

 

 

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1+2=双子??

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採卵の次の日、受精確認の際、「受精はしていますが、異常受精になってしまったので、 このたまごは治療には使えません」と言われたことがある方もいると思います。クリスマスの時にお見せした写真では、たまごの中にある前核というものが 2個だったのに対して、上の写真では見にくいかもしれませんが、3個認めます。この現象は、普通の体外受精の場合、ほとんどは精子が2匹入ってしまった場合に発生し、多精子受精といいます。(研究中ですが、精子を1匹だけたまごに入れる顕微授精の場合にも、受精確認時にたまごの中に前核を3個認めることがあり、こちらはたまごの減数分裂の失敗が原因のようです。) 精子が2匹入ったのなら、双子になる んじゃないか !? と思われるかもしれませんが、実は、染色体が多くなってしまうため、正常には発育しません。ですから、せっかく受精しても移植することができません。1卵生の双子でも、たまごと精子は1対1で受精しているんですよ。

 

 

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採卵

体外受精はまず、採卵からはじまります。超音波をみながら卵胞に細長い針をさして、中のたまごを取り出すのが採卵です。「針をさす」と聞くととても痛いように感じますが、チクッとするくらいで、時間も5分程度で終わります。

もちろん痛みには個人差があります。でも、痛みに強い人・弱い人・怖がりな人など、毎日いろんな方が採卵をしていますが、はじめは不安でいっぱいでも終わってみるとほとんどの方が、「意外と大丈夫でした」と言われます。

そして採卵が終わると、採れたばかりのたまごをモニターで見ることができます。ご自身のたまごをみて緊張から安堵の表情にかわる様子が拝見できると、私たち培養士もほっとします。

どうぞあまり怖がらず、リラックスした気持ちで採卵にのぞんでくださいね。

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顕微授精

                    
 
 
卵子の膜が硬かったり、精子の数や動きに問題があると、精子は自力で卵子の中に入ることができません。そんなとき、写真のように細い針を使って、精子が直接卵子の中に入れるように手助けをします。これが顕微授精です。
でも顕微授精は、あくまで精子が卵子の中に入れるようにお手伝いをするだけ。その後受精するかしないかは、卵子と精子の生命力に任されます。
どうか受精しますように、と願いをこめながら一つ一つ大切に顕微授精に取り組んでいます。

 

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