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卵子とモヤモヤ

moyamoya.jpg採卵を経験された方は、卵子を手術室内のモニターでご覧になったことがあると思います。たいていの場合、卵子はモヤモヤしたものに囲まれていてあたかも小さな目玉焼きのように見えます。このモヤモヤの正体は顆粒膜細胞(卵丘細胞)で、卵子を成熟させる大切な役割を持っています。卵子は成熟するまで、顆粒膜細胞と一緒に卵胞という袋の内壁にへばりついていますが、成熟すると内壁からはがれて卵胞液の中をただよい、排卵の時を待ちます。採卵は、超音波のガイド下に卵胞を特殊な細い針で穿刺して卵胞内の液体(卵胞液)を吸引しておこないます。培養士が、吸引された卵胞液中にただよっているモヤモヤを目印に卵子をすばやく探して培養液に移し、顕微鏡を通したモニターの画面上でめでたく「ご対面」となります。

 

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卵子が排卵されるまで

前々回卵子の元となる原始卵胞のお話をしましたが、今回はその続きです。

 

20~30万個ほどに減った原始卵胞は思春期になると、日々いくつかが成長を始めます。そして成長を始めて約65日後、ちょうど月経周期がめぐってくると下垂体から分泌される卵胞ホルモンの影響を受け、さらに大きく成長していきます。このように、成長を始めた卵胞すべてが月経周期にエントリーされるわけではなく、ちょうどホルモンの影響を受けられる大きさになったものだけがエントリーされます。そのため、1度の月経周期にエントリーされる卵胞は10数個ほどだとされています。また、その10数個の卵胞も成長の度合いが異なるため、大きさが揃っているわけではありません。その結果、最終的にはこの中で1番大きく、1番ホルモンに対して反応の良かった1個が大きく成長し排卵されます。それ以外の卵胞はこれまでのように自然と数を減らしていったり、排卵に向けて成長を始めても途中で成長が止まり体に吸収されたりします。

このようにして初潮から閉経までの間に排卵される卵子の数は400~450個ほどだといわれています。つまり、排卵される卵子はすべての原始卵胞のうちのほんのわずか、約5万分の1個ほどなのです。

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卵子の大元となる細胞

卵子の大元となる細胞を、"卵祖細胞"といいます。

まだ お母さんの子宮の中にいる頃に作られ始めます。

妊娠6ヶ月頃 約500~700万個ほどになり、この時期が最大となります。その後は自然に減少し、出生前には約200万個ほどになります。

そして、卵祖細胞から少し成長した"卵母細胞"となり卵巣の中で、長い長い眠りにつきます。

 

生まれる時は、この卵母細胞(約200万)と共に生まれるのです。

生まれた後も、この卵母細胞の自然減少は止まりません。

7歳頃には50万個、思春期には20万~30万個ほどになります。

そしていよいよ月経が始まると、目覚めた卵母細胞が発育し、"卵子"が排出されます。

まさに10数年間の眠りから目覚めた、"卵子"の誕生です。

 

"卵母細胞"は、"長生き細胞"です。自分と同じように年を重ねています。

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透明帯の役割

前回AHのお話で透明帯の役割について少し触れましたが、今回はもう少し詳しくお話したいと思います。

 

透明帯とは卵子の周りを覆っている糖たんぱく質の膜です。

透明帯にはいくつかの役割があり、その1つが受精における先体反応の誘起と多精子受精の阻止です。受精において精子が卵子に入り込む際、精子の先端から酵素が放出されることで精子が透明帯を通過し卵子に入り込むことができるようになりますが、透明帯はこの先体反応を引き起こす働きがあります。また、1匹の精子が卵子に入り込むと透明帯が変化し、他の精子が侵入できないようにすることで多精子受精を防いでいます。

そして、前回お話したように分割期にある胚の細胞がばらばらにならないよう囲い、さらには周囲からの悪影響を受けないように胚の中身を守ってくれています。このように、透明帯は卵子ができてから胚が子宮壁に着床するまでの間、胚を外界から守り、保護する役割をも担っています。

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アシステッドハッチングって...?

最近アシステッドハッチング(AH)という言葉をよく聞くことがあるかと思います。

ではAHとはいったい何なのでしょう?

以前、胚盤胞は透明帯という殻を脱ぎ捨てて子宮内膜に接着し、着床するとお話したことを覚えていますか?この、殻を脱ぎ捨てるという行動をハッチングといいます。そう、このハッチングを人の手でお手伝い(アシスト)することがアシステッドハッチング(AH)です。

通常は胚自身の力や酵素の力などで自然と殻が破れるのですが、まれに殻が分厚かったり硬かったりして破れにくいことがあります。そんな時にこのAHをしてあげることで、着床しやすいように手助けしてあげることができます。

 

では、胚を移植する時いつでもAHすればよいのでしょうか?

そうではありません。例えば採卵2日後に移植する時、胚は4細胞などの分割胚の状態にあります。この時期に透明帯を取ってしまうと、1つ1つの細胞がくっつていないため、細胞みなが離れ離れになってしまいます。透明帯は細胞がばらばらにならないように囲ってくれているのです。その後胚盤胞になるころには細胞間の結合が強まり、もうばらばらになることはありませんが、透明帯は周囲からの悪影響を受けないよう胚の中身を守ってもくれています。このように、透明帯はある時期の胚にとってとても大切なガードマンのような存在なのです。つまり、もう殻を脱ぎ捨てる準備が整っているのに殻が破れない時はAHがとても有用なものとなりますが、まだ脱ぎ捨てる準備が整っていないのに無理矢理殻を脱がせてしまうことが胚にとっていいこととは言えないのです。ですから、私たちはAHを行う時期と必要性を見極めてハッチングを手助けしています。

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