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たまごの凍結保存 (1)

1980年代の凍結受精卵による妊娠例の報告は、生殖補助医療関係者にとって画期的な出来事でした。ただし、当時の成績はまだまだ満足のいくものではありませんでした。20年余にわたる多くの研究者の様々な改良工夫によってその成功率は向上し、たまご(卵子や胚)の凍結保存は、不妊治療戦略の可能性を広げる技術として、生殖補助医療の歴史の中で重要なマイルストーンとなりました。

現在、主流となっている凍結保存法は「超急速ガラス化法(Vitrification法)」と呼ばれるものです。金沢たまごクリニックでもこの方法を用いて大切なたまごを凍結保存しています。凍結の際に、凍結保護剤を凍結保存液に添加していますが、この種類と量のノウハウがたまごの生存性に大きく寄与しています。「超急速ガラス化法」と言う名前は一瞬に室温から摂氏マイナス196度まで冷却されるスピードが由来となっています。凍結されたたまごはほぼ完全に細胞内の分子運動がなく、いわば時間が止まった状態となり、理論的には半永久的に保存が可能であると言われています。

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胚盤胞になるための難関

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以前、分割胚が胚盤胞まで発育する経過中、ばらばらに離れている細胞どうしがいったん中央に集まって密着する、というお話をしました。上の写真が細胞どうしが密着している状態です。このように、細胞どうしがゆるい配列から急に集まってひとかたまりに接着したような状態になることを「コンパクション」といいます。ヒトでは16細胞くらいになると「コンパクション」が起こり、細胞の代謝が活発化して、タンパク合成が増加するといわれています。「コンパクション」の最中に、細胞どうしがなんらかの連絡をとりあって胚発生の過程でどの細胞がどの器官に分化 していくか役割分担を決めていると考えられています。この現象が起きなければ、いくら細胞が増えても胚盤胞には発育できません。この劇的な変身には多くのエネルギーを必要とするため、すべての分割胚がこの壁を乗り越えられるとは限らず、胚盤胞まで発育することが難しいのかもしれません

 

 

 

 

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受精率

通常の体外受精と顕微授精の受精率の差についてよく質問を受けます。両者には若干の差があります。

顕微授精の場合、卵子の周りに付いている卵丘細胞(目玉焼きの黄身が卵子だとすると、白身に相当する細胞)を取り除いて、成熟を確認した卵子のみに行います。そして卵子に精子を直接入れるので、必ず出会えます。(ただし、出会った後に何らかの反応を経て受精となるので、100%受精するわけではありません)

通常の体外受精の場合は、卵丘細胞が必要なので取り除きません。このため媒精(お見合い)した卵子の中に、未熟で精子を受け入れられない卵子が含まれている場合もあります。また、自然に出会うのを待っているので、受精障害がある場合には出会いそびれ(精子が卵子に進入できない)が生じます。

以上の理由から、統計処理をすると顕微授精の受精率が少し高くなります。受精した後の胚の発育・妊娠率に差はないため、培養士と医師は、精子の状態・過去の治療歴などからどちらの方法がよいのかいろいろ考えていますが、患者さんの希望も大切にしたいと思っています。 「やってみたいけどよくわからない・・・」ということがあれば、気軽に声をかけてくださいね。

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卵子の成熟とは...

通常、ヒトの細胞は性別を決めるための性染色体を2本持っています。

しかし、卵子、精子それぞれは性染色体を1本しか持ちません。どうし

て1本になるかというと、2本づつあるいは片方が2本の性染色体をもっ

て受精をすると、その受精卵は性染色体が3本や4本になり、染色体

異常疾患となってしまいます。そうならないために、卵子や精子は2本

から1本になるため、減数分裂という細胞分裂を行い、受精に備えます。

また、性染色体だけでなく、他の遺伝情報をもつ常染色体に関しても

同じで、染色体の不足や過剰は染色体異常疾患に繋がります。

 

少し難しくなりましたが、減数分裂を簡単にいうと、染色体が多くなり

すぎないように、細胞質の中にある染色体を2つにわけ、半分を細胞

質の外に放り出すという作業です。放り出されたものを極体といい(緑

の矢印)、これが確認できるたまごが成熟している卵子ということです。

つまり、極体が見えないたまごは、まだ減数分裂が完了しておらず、

精子を受け入れることができないのです。

 

                        oocyte-m2.jpg 

 

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7日目の胚盤胞

当院で採卵後に胚盤胞移植をする場合は、5日目もしくは

6日目に発育した胚を移植しています。ただ、なかには発育が

ゆっくりで、7日目にようやく胚盤胞になる胚もあります。

その場合、採卵した周期には移植せずに凍結保存しています。

 内膜には「インプランテーションウィンドウ」という胚の着床可能な

期間があり、採卵後7日目に胚盤胞を移植しても、すでに内膜は

胚を受け入れられない状態になっていて、せっかくの胚が無駄に

なってしまうと考えているからです。

 凍結保存した胚盤胞は、別の周期にホルモン値測定や超音波診断から

内膜の受け入れ態勢を考えて移植します。

大切な胚がひとつでも多く妊娠につながりますように・・・

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