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1つ1つの細胞にも個性が...

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生物の授業などで聞いたことがあるかもしれませんが、細胞は分裂を繰り返して増えていきます。1つが2つに分裂することを繰り返すので、単純に考えると、細胞の数は1→2→4→8→16と倍々に増えていくように思えます。でも実際には、初期胚移植の時に、細胞(割球)の数が3個だったり、5個や6個のたまごもしばしばあります。上の写真は、受精からほぼ同じ時間を経過した時点で観察した、まごたちすが、左から3細胞、4細胞、5細胞と割球の数が違いますね。これは、体の成長個人差があるように、細胞1個1個の発育スピードにも違いがあるためと思われます。そのため、「1つの割球は分裂したが、もう1つの割球が分裂するちょっと前」、というタイング たまごを観察すると3細胞だったり5細胞になっていたりするわけです。3細胞や5細胞が、不良のたまごというわけでは決してありませんから安心してくださいね。

 

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通常の体外受精と顕微授精

卵子に精子をふりかけて受精を待つ「精子おまかせコース」を、「通常の体外受精」と言います。となると、卵子に精子を一匹入れ受精を待つ顕微授精は、「通常ではない体外受精」なのでしょうか?

体外受精:IVFは、約30年前に誕生しました。その頃は、まだ媒精(卵子と精子のお見合い)方法といえば、「精子おまかせコース」しかありませんでした。それから約10年後、技術の進歩により、顕微授精ができました。そこで、「顕微授精」と「精子おまかせコース」を区別するため、「精子おまかせコース」にも呼び方をつけましょう、となりました。そしてついた名称が「Conventional IVF」だったわけです。

一般的に、「Conventional IVF=通常の体外受精」と訳されますが、Conventionalには、従来の、という意味もあるので、「顕微授精よりずっと前から行われている=従来の体外受精」というほうが、しっくりくるのかもしれません。つまり、顕微授精は、「通常ではない体外受精」ではなく、「通常の体外受精より後にできた媒精方法の一つ」ということなのです。

日本産科婦人科学会の統計処理でも、「体外受精」と「顕微授精」に分類されていますが、本当は、「顕微授精」も「体外受精」のひとつなので、なにかしっくりきませんね。もっと明確な用語が提案されるといいなあと思っています。

 

 

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もどかしさ

私たち培養士は、採卵後から、卵子や精子の状態を逐次、患者さんに説明していきます。採卵当日には、必要に応じて卵子と精子のお見合い(媒精)のさせ方を相談します。さらに採卵翌日には、きちんと卵子と精子が合体(受精)できたか、翌々日には、細胞分裂が始まったかをお電話で報告しています。胚盤胞移植もポピュラーになりましたので、培養経過も複雑になり、移植や凍結の計画も合わせて、報告する内容がとても多くなってきました。
体外受精を受けられる方にとって、卵子・精子の状態、受精成立、初期胚・胚盤胞の発育状況は、とても大切な一大関心事です。でも、たまに、採れた卵子の状態から、今後の受精・初期胚・胚盤胞までの経過予想を要求されて、答えに困ってしまうこともあります。これまでの膨大な培養経験やデータから、いろいろ戦略を考えてベストを尽くそうとしているのですが、機械と異なり、生物(細胞)は本当に予測不能の局面があります。もし、期待・予定どおりの説明や報告ができなくて、もどかしい時があっても、一生懸命心を込めて培養していきますので、どうか許してくださいね。

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通常の体外受精

体外で精子と卵子を受精させるには、媒精 (卵子と精子のお見合い)をすることが必要です。媒精には、体外受精のいろいろな歴史を経て、現在、「通常の体外受精:conventional IVF」と「顕微授精:ICSI」の二通りがあります。精液検査所見がある基準をクリアできれば、「通常の体外受精」が選択されます。

「通常の体外受精」は、卵子と培養液の入った dish (培養するために作られた特別の容器) に、良好な精子を10万から20万匹ほど入れます。つまり、精子に「おまかせコース」です。精子たちは卵子めがけて懸命に泳いでいき、卵子の周囲にたくさん接着してなんらかの反応を卵子に与えた後、運命の精子一匹が卵子の透明帯・細胞膜を通過して、内部 (細胞質) に進入します。卵子の細胞質に入った精子は頭部が変化して雄性前核 (父側の遺伝子のかたまり) になり、順調に成熟した卵子内の雌性前核 (母側の遺伝子のかたまり) と合体できると、めでたく「受精」となります。

 

 

 

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胚盤胞って...?

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体外授精をしていると、よく胚盤胞という言葉を耳にすると思いますが、

実はあまりよくわからない、という方もいるのではないでしょうか。

長めに培養をして、発育が進んだたまご...となんとなく理解しているとは

思いますが、少し詳しく紹介しましょう。

2日目で移植を行うときは、初期胚といって細胞が4個前後のたまごを

子宮に戻しています。それらは見たまま、細胞数が3個や4個、5個といった

ものですね。そこからさらに3日ほど培養を続けると、細胞分裂を繰り返し、

細胞数が100個近くまで増えてきます。

細胞が増える過程で、離れている細胞はくっついたりもします。1つ1つが

離れている間は中央に細胞が集まっていますが、いったんくっついた後は、

細胞は外側に広がり、中央に空洞を作っていきます。

この,細胞数が増えて空洞を作った状態が胚盤胞です。胚盤胞になると、

細胞の役割が2つに分かれます。上の写真で11時の方向にある丸い塊は

内細胞塊といって、将来胎児になっていくものです。その他のぐるっとまわり

を囲んでいる扁平な細胞が栄養膜細胞といって、将来胎盤などになっていく

ものです。

また胚盤胞になると、成長の仕方が変わっています。どんどん大きさが大きく

なるのですが、身長が伸びるようにただ大きくなっていくのではなくて、縮ん

だり広がったりを繰り返して大きくなっていきます。ですから、移植の時にたま

たま縮んでいて中身が小さくても心配はありません。これから大きくなっていく

んだなと見守ってください。

これで少~し胚盤胞のことがわかったでしょうか??

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