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着床

着床とは、たまご(胚)と子宮内膜が接着して相互に物質交換できる状態になることです。チューリップの球根を植木鉢の土に埋めてあげた後、根が生えてきて土から水分や栄養分を吸収できるようになった状態をイメージしてもらうといいかもしれません。

移植したたまご(胚)は、次の過程を経て着床します。

①「初期胚」は細胞数が100個ほどの「胚盤胞」に発育して拡張する ②「胚盤胞」は拡張することや酵素の作用などにより、透明帯という殻を脱ぎ捨て「脱出胚盤胞」になる ③ 子宮内膜の細胞に接着し周辺の細胞をかき分けて内膜の奥(子宮間質)に潜り込む

この一連のステップを完了して着床に成功し、さらに発育が進んで絨毛(球根に例えたら根に相当する細胞)が増えてくると、約1週間後の妊娠判定日にHCGというホルモンが検出されて「おめでとう」となります。

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たまごの凍結保存 (3)

体外受精では、たまご(卵子や胚)を凍結保存することによって治療戦略にvariationを付加できます。現在普及している「ガラス化法」は、昔行われていた「緩慢凍結法」に比べてものすごいスピードでたまごを液体窒素の温度(摂氏マイナス196度)まで冷却して一瞬に凍らせます。でも、ただ無茶苦茶冷やせばいいというわけではなく、ある工夫が必要です。

 人間の体と同じように、たまごの細胞もそのほとんどが水からできています。そのため、そのまま液体窒素に入れるとたまごの中の水が氷結し、氷は水より体積が増加するので、細胞内小器官や細胞膜を破壊し、たまごは生存できなくなります。ペットボトルのウーロン茶を冷凍室に入れて凍らせると容器が破裂しそうに膨らむのを見たことがあると思います。ダメージを与えずにたまごを凍結するには、まず、たまごの中の水分をできるだけ減らすことが鍵になります。

いろいろな研究の結果、「ガラス化液」という高濃度の特殊な培養液が開発され、たまごの凍結法は飛躍的に進歩しました。たまごを「ガラス化液」に入れると浸透圧により脱水され細胞内の水分は短時間で激減します。さらにたまごにやさしい特別な凍結保護剤を加えることで、細胞内の水は氷にならずに液体窒素の中で一瞬に凍結でき、生存率がとても高くなりました。細胞内の水分を結晶化させずに透明なガラス状の固体に変化させることから「ガラス化法 Vitrification」と呼ばれています。

 

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培養室の中

以前「培養庫」のお話の中で、たまごを育てる培養庫は、温度やガス濃度が一定に保たれているとお伝えしましたが、わたしたち培養士が普段仕事をしている培養室も室温や湿度が管理されています。

一日3回決まった時間に室温と湿度を測定し、室温26℃前後、湿度50-60%に保たれるように、コントロールしています。

なので、夏の暑い日も冬の寒い日も、培養士は半袖の術衣に素足にサンダル履きという格好で、日々の仕事をもくもくとこなしています。

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たまごの凍結保存 (2)

ガラス化凍結法では、写真のような、「クライオトップ」といわれる耳かき状のプラスチックの特殊な棒の先端部に、胚を貼付ける様にのせて保存しています。
最近の体外受精は、mild ART が key word です。HMG や FSH 製剤を多用する強力な排卵誘発は避けて、自然周期や clomiphene によるやさしい排卵誘発が主体になっていますから、昔に比べて採卵される卵子の数は激減しています。 それでも、数個は採取され、単一胚移植の後に余剰胚が生じることがしばしばあります。この余剰胚を凍結保存しておけば、採卵周期に妊娠できなかった場合でも、次周期に採卵しないで凍結胚を融解し再度移植の機会を得る事が可能になります。また、妊娠、出産できた場合にも、余剰胚を凍結保存しておくことで、二人目、三人目の治療に使用することが可能となります。

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胚移植の2つのルート

胚の移植方法には、カテーテルの通るルートにより、経子宮頚管法(上図)と経子宮筋層法(下図)の2種類があります。

当院では基本的に経子宮頚管法を行っています。「胚移植」の記事でもふれていますが、この方法では、胚を吸引した細いカテーテルを子宮の入り口(外子宮口)から挿入し、子宮の奥に注入します。採卵と異なり、針は使用しないので、痛みはほとんどありません。

経子宮筋層法では、筋層を経て子宮内膜まで特殊なガイド針を刺入し、そのガイド針の中へカテーテルを挿入して子宮の中に胚を注入します。子宮頚管内にポリープがあったり、頚管の屈曲が強くて経子宮頚管法ではカテーテルが挿入できない症例でも移植が可能です。19年前に、永遠幸マタニティクリニック(現永遠幸レディスクリニック)で開発された方法で、「TOWAKO法」といわれています。 

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